低音デュオセカンド・アルバム「双子素数」の感想
チューバ(orセルパン)とバリトンによるユニット 低音デュオの第2作目が3年ぶりにリリースされたので、早速購入鑑賞をいたしました。今回も早速感想を書いてみたい思います。
- アーティスト: 低音デュオ[声/バリトン:松平敬?チューバ、セルパン:橋本晋哉],徳永崇,湯浅譲二,山本和智,高橋悠治,川上統,木下正道
- 出版社/メーカー: ALM RECORDS
- 発売日: 2018/09/07
- メディア: CD
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前作「ローテーション」は、中世~ルネッサンス音楽と現代音楽から選曲されており、どちらかというと女性的(中世~ルネッサンス音楽が女性的かどうかは異論がありましょうが)な面もあったのに対して、今回は現代音楽のみ、既知曲なし、武満ソングのような大衆受けのする曲ももちろんなしで、より男っぽくなった(?)印象です。
ちなみに、iTunesのCDDBによるジャンル分けは、「ローテーション」が"Pop"で「双子素数」が"Classical"となっています。もちろん正しいとか間違っているとかではないのですが、そういう世間のイメージになっているようです。
楽曲
○感情ポリフォニー
「感情についての説明」がテキストとして用いられており、音楽それ自体はその感情とはあまり関係がないところが面白い曲です。この曲で驚くのはチューバの橋本さんが語りと演奏を頻繁に切り替え、中にはマウスピースに唇を当てたまましゃべっているらしき部分もあり、ボケっと聴いている分には楽しい曲なのに、演奏はおそらく相当に至難なのだと思います。オイ!(やや喧嘩腰)、オーイ(呼び声)、エ?(とまどいがち)といった擬音語の感情表現も出てきます。
○高音化低音
今回のCDで一番気に入った曲です。標題だけで想像すればものすごいファルセットを歌うとか、超絶ハイトーンを出すとか、あるいは電子処理するとかなのですが、そういう趣旨ではなかったようです。
まず、二人の息ノイズ。ホワイトノイズと考えれば理論上超低音から超高音まで均等に含んでいるわけです。
そのまま母音唱法を繰り出しながら全休止するときに、金属的な高い音の余韻が残っています。
どうやって出しているのかわかりませんが、ピアノの中に発声しているとか、銅鑼に向かって音を出しているとか、チューバのベルの中に発声しているとかではないかと思います。
そのまま母音唱法を繰り出しながらだんだんホーミー的な和音が聴こえだし、見えない高音のようのものが現れ、あるいはうっかりするとモーグシンセかと間違いそうになるあたりで、かん高い金属打楽器の音が一音鳴って終わります。
○明日も残骸 しいんと ぼうふらにつかまって
ぼうふらというのは昨今ではあまり見なくなりましたが、蚊の幼虫です。これ以上ないというくらいに軽く水面に浮かんでいるのですが、この「ぼうふら」「残骸」「しいんと」というテキストと音楽のもたらす荒涼とした不安定なイメージは、どこか懐かしい響きがする不思議な感覚に襲われました。
これは私の幼少期の思い出に繋がるのですが、それをここで書いても詮無いことなので、とにかくそういうノスタルジーを誘う作品に聴こえました。
○児童鯨
トランペットで馬のいななきができるのなら、チューバで象の鳴き声もできるのではないかと漠然と思っていたのですが、小型の鯨の鳴き声を音楽で模倣した作品だそうです。
mmmmmmmmmmmmm...............という高音の鳴き声、コポッコポッというチューバの音などが散りばめられていて可愛らしい曲です。
○他の2曲
「ジョルジオ・デ・キリコ」と「双子素数」は、何度聴いても「現代歌曲」にしか聴こえず、積極的な感想が出てきません。申し訳ないです。
松平さん参加のユニットとしては、この低音デュオのほかに双子座三重奏団というのがあり、こちらはまだCDは発売はされていませんが、コンサートには一度行ったことがあります。
一方、低音デュオのほうはまだ実演に接したことがないので、機会あればぜひ出向きたいと思います。(地方在住の悲しさよ・・・・)
前作も今回の作品も同じですが、ややグレードの高いオーディオで聴いたほうが良い音楽だと思いました。(クラシック音楽全般はそうでしょうが、特に低音強調の音楽ではその傾向が高いです。)
Airpodsで聴くと低音がビリビリ云いますので、できればやや性能の良いヘッドホンで聴くのが良いです。
かつての上司に相当コアなオーディオマニアがいて、「50万円のスピーカーで聴くくらいなら5万円の高級ヘッドホンで聴いたほうが良い音がするか」と質問したら、即答で「然り」とのことでした。
せっかくなので、金策ができたら5万円はムリとしても2万円程度のヘッドホンを買ってみようかと思った次第です。