(コンサート見聞録)札幌旭丘高校合唱部第16回定期演奏会
3月25日、札幌コンサートホールキタラ大ホールにて行われた、札幌旭丘高校合唱部の第16回定期演奏会に足を運んできましたので、感想などを書こうと思います。
全国大会レベルの実力を持ち、すでに何度か受賞もしているということで、結構な規模の大ホールはほぼ満員。全席自由なので空いている席が探せず、スタッフの方に頼んで探していただいたところ、客席最前列のやや左側でオーケストラの配置でいえばヴァイオリンの最後尾の正面あたりという、噂に聞くサントリーホールのサスペンダー氏(?)のような、些か恐縮な場所に座らせていただきました。
私は実はこの高校にも合唱そのものにも縁のないただの音楽ファンにすぎず、本当はこの翌日に演奏されたバッハ作曲「マタイ受難曲」全曲演奏に足を運ぼうと思っていたのですが、極めて長い曲でもありますし、録音でよく知っている曲をわざわざ聴きに行くよりも、知らない曲(合唱関係者には有名かもしれません)を聴いたほうが新鮮でよかろうということで、足を運んだ次第です。
(1)顧問 大木教諭の退職
この合唱部を長年指導していた大木教諭が定年により引退されるということで、その記念コンサートということになっていたようです。とはいえ、おそらく公職を引退しただけで、完全隠居なさるご年齢でもなさそうですので、名誉顧問のような形で指導していただくのがよいかと推察します。
最前列で聴いていた関係で指揮姿は良く見えたのですが、終始にこやかな表情でしたので、きっと明るいお人柄で部員にも慕われているのだと思います。
(2)演奏曲目
1 次元(三宅悠太作曲)
2 少年時(鈴木輝昭作曲)
3 Che se tu se'il cor mio(Guarani作曲)
4 O Magnum Mysterium(Memley作曲)
5 ペッパー警部(踊り付き)
6 オー・シャンゼリゼ(踊り付き)
7 Aba Po,Santa Mariang Reyna (Ryan Cayabyab作曲)
8 Sleep (Eric Whitacre作曲)
9 レクイエム(フォーレ作曲)
(3)ソリストとオーケストラの皆さん
(3)感想など
Aba Po,Santa Mariang Reynaなる曲はタガログ語(フィリピンのネイティブ言語)のテキストであるらしく非常に新鮮でした。ラテン語、タガログ語、日本語という混在言語である上に、学校での風景を歌っているコンクール曲では学生っぽく、ペッパー警部は明るく元気に、レクイエム等では宗教音楽として、それぞれしっかりとそのように聴こえているのが素晴らしいと思いました。
部員は圧倒的に女性(女声)が多いのですけど、レクイエムでは何箇所か男声が強調される箇所があって、そこは男子部員がしっかり歌っておられたようです。
繰り返しますが、私は合唱関係者でもなく演奏家でもないので、個々の曲についてその出来不出来を論評することはできません。日本語で「合唱」と書いてしまうと十把一からげになってしまうのですが、何もベートーヴェンの第9だけが合唱ではないわけで、それぞれコンクールの課題曲、現代曲、宗教音楽、ポピュラー曲等の「音楽」として素晴らしく聴こえたという賛辞を贈りたいと思います。
余談ですが、某音楽評論家氏が「自分がどんなに力作の評論本を書いてもAmazonの売上No1であるピンクレディのDVD付き振り付け本には数字で勝てない」と言っていたのですが、まさかこんな場面でニーズがあるとは思いませんでした。
(4)札幌コンサートホールキタラについて
響きのよいホールということで好評をいただいているようなのですが、いわゆるハコモノ行政で作られた施設ですので、元副市長である実務家の秋元市長はおそらく「成金趣味なコンサート誘致はやめて、地元の文化育成に傾注するという」方向に舵を切ったのではないかと思います。
3月26日上演のマタイ受難曲全曲はアマチュアとはいえ、ちゃんとレント(受難節)に演奏していますし、大物ミュージシャンの来日公演が聴きたい方はそれ以外の遊びも兼ねて東京まで行けばよいのです。それがご縁で一日違いの札幌旭丘高校合唱部の演奏に出会えたのは大変良いことだったと思います。