述而不作 いにしえの未来

占い師の見てきた世の中を語ります 遥か古代から続く終わりの始まりを見据えて

EPOさん新譜「愛を?LOVE IS ON?」/一応の夢があった頃のJ-POP復権

いったい何がどうしたものやら、J-POP大御所のニューアルバムが9月に続々リリースされ、私の確認した限りではつぎのとおりです。

 

矢野顕子さん

中島みゆきさん

高中正義さん

コシミハルさん(マイナーですが実力者です。)

そして

EPOさんです。 

 

今回、EPOさんのニューアルバムを購入して聴いてみました。

愛を?LOVE IS ON?

愛を?LOVE IS ON?

 

 

EPOさんは、80年代のいわゆる「シティポップ」ミュージシャンとしてブレイクしましたが、その後、ご自身の表現したい世界に没頭して、中央アジア的な音楽や、古典クリスマスソングなどを取り上げています。

 

シティポップという用語は、J-POPという用語がないころ、「ニューミュージックでもフォークでもロックでも歌謡曲でもない明るい音楽」という漠然とした用語で使われていましたが、一応、そこに時代的なニーズはありました。

 

今回、ふたたび80年代のシティポップ的なセンスの歌に取り組んだのは、先行して、土岐麻子さんに提供した「あなたはマドンナ」という曲がブレイクしたので、本家であるEPOさんにも「是非!!」という形になったようです。

 

 内容はなかなか多彩で、

・「何もそこまで」というくらいの80年代アレンジ(もう一度恋をしてみようかな)

EPOさんでなければ、書けない、歌えない、カラッとした歌(いくつか)

・さりがなくボッサ風にまとめてみつつ、バブルの喧騒をせせら笑うような歌(Late Summer Sambaほか)

 

といった感じです。

全体的な80年代ポップと違うのは、「外国の都市名(ニューヨークだとかイスタンブールだとか)」や「小洒落た酒の名前(キールやらモスコミュールやら)」をいちいち歌詞に混ぜていないことです。

 

アレンジもEPOさんが担当されたとのことですが、楽器の用法もかなり変わっていて、ゴングとボンゴが同時に鳴っていたり、妙に重たいブランスアレンジがあったりしますが、この辺は専門家がどう評価するのか気になるところです。

 

なにはともあれ、音楽的にさまざまな発見のある新譜なので、何度も繰り返して聴いていくと、リスナーのほうも耳がこなれていく楽しいCDだと思います。

 

<追記>

 

この10年ほど、やたらと80年代ソングが流行っていますが、その理由のひとつとして、80年代には世の中は安定していましたけど、見れる夢が限られていた(夢があったのではありません)からではないかと思っています。

 

当時の20代の若者の描く自分の将来像は「なるべく大手の企業や官庁に就職すること」または「さっさと家庭に入って主婦業母親業に専念する(女性のみ)」が基本スタイルだったので、それ以外のおよそどうでもいいことに対して夢が持てたからだと私は思います。

 

当然、その夢の需要を満たすための商品を広告代理店が企画立案していました。

 

現在、生きるために必死にならねばならない時世に、夢など見ている余裕などないですし、男性も女性も自由に生きる可能性をほぼ手に入れましたから、逆に自分の限界が矮小に見えて仕方がないのだと思います。

 

「自分らしくありのままに」をキーワードにした歌がここ10年で量産されましたが、あまり奏功しなかったようです。この辺はまた機会があれば書いてみたいと思います。