述而不作 いにしえの未来

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【市民講座】音の形とデザイン 受講メモ

札幌市立大学の市民向け講座「音の形とデザイン」なるものを受講してきましたので、その記録を書いてみます。市民向け講座を受講するのはルドン絢子先生の中世音楽講座以来です。

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tukurazu.hatenadiary.com

 講義の前半は音の波形と周波数およびその組み合わせについての講義で、早い話が電子音楽シンセサイザーの原理を簡単に紹介するもので、後半は音の持つイメージや感覚が工業デザインにどう生かされているかの紹介でした。

面白かった点

(1)日本語は世界中の言語と比較して極めてオノマトペが多い

擬音語・擬態語は、完全にビジネスに応用されていて、「ほっかほかの肉まん」「キンキンに冷えたスイカ」「ほっこりおでん」など、オノマトペなしではもはや商売が成り立たないようです。

外国語にも擬音語はあるのですが、日本語ほど豊かではなく、..like ...thanのような形で表現されるようです。(Hotter than Hellと書けば「地獄より熱い」と直訳できますが、死ぬほど熱いのようなニュアンスでしょう)

(2)ある形状の物体に任意の名前を付けるとどこの国に行っても似たような名前になる

たとえば、割と適当な五角形の絵を描いて、それに2つの名前の候補を挙げる。ひとつは「キキ」もうひとつは「ムーマ」とし、これを学校でも街をゆく人にでもアンケートを取ってどちらが相応しいかと問えば、ほぼ全員が「キキ」と答えるという話です。

つまり、「キキ」というのは鋭角的なイメージ、「ムーマ」は丸いイメージということです。 

(3)大衆車のドアを閉める音と高級車のそれとは音そのものの高級感が違う

大衆車のドアを閉める音は「バタン!」という平凡な音ですが、トヨタ・レクサス(例)のような高級車のそれは「バタム(余韻あり)」という風格のある響きになっていて、これも意図的な設計であるとのことです。

産業界では、「高級感のある音」「木の香りを感じさせる音」というような一見雲をつかむような話が研究されていて、そもそも高級感とはなんであるかという思索の領域にまで入る話のようです。*1

受講者からの質疑応答

その1

受講者「私は528Hzの揺らぎ(?)を中心にした癒やしのCDを持っているのですが、これはやはり科学的根拠があるのでしょうか」

講師「そのようなヘルツの音がずっと鳴っているCDですか?」

受講者「いえ、普通のクラシック音楽です。」

講師「うーん・・・・そういうのはあまり聞いたことがないですね。普通のクラシック音楽が528Hzを中心に作曲されているとは思えませんし」

 その2

受講者「私はα1/2の揺らぎというCDを持っているのですが、どうもあまり癒やされないんですけど、どうしてでしょう」

講師「うーん・・・そのα1/2というのがそれほど学問的に完全に証明されたものではないようですし。。*2 

 その3

受講者「私は440Hzの正弦波をサンプリングして、これをAudacityでどんどんテンポを遅くしていくと、ある時点からうねりのようなものが聴こえだすのですが、これは数学的に算出できるのでしょうか。」*3

講師「私もAudacityを使っていますが、そういう実験はしたことがないです。少なくとも標準機能でやっている分にはそうした現象は生じないですね。 」

おわりに

大変有意義な講義だったと思いますが、受講者の質問で結構出ていた「癒やしのCD」に関する件は、マイナスイオンとかナノイーとか「一週間で10キロ痩せる魔法のサプリ」とかいうのと同じで、単に気分の問題なのではないかと思います。

工業デザインにおける音の使い方は、たとえばエレベーターが上階に登る場合は「ドーソ」下階に下る場合には「ソード」のような音階を変えることで無意識にビル移動がしやすくなっているなど、日常気が付かない場面での音のデザインや先に書いた「高級感のある音」など、今後街を歩いていて気がついたことがあればメモしておくと、新たな発見があるのではないかと思いました。

*1:わりと安易に音楽レベルでの高級感を出すならばクラシック音楽ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」のような曲が選ばれますが、それらが本当に高級なのかどうかは謎です。

*2:そういう理論云々の前に音楽それ自体への好みというものがあります。

*3:これは私の質問でした。結局答えはわかりませんでした。でもこの操作でうねりを感じることは可能なのです。