「変な音楽」のある風景~記憶の彼方にある人々の阿鼻叫喚
変な音楽の定義
私は特段の偏見なしに面白そうな音楽はひとまず聴いてみて、自分の感性がどう動くかを確かめながら資料を読んだり、その音楽が一般に呼ばれているジャンル全体を考えながら堪能しているのですが、特に音楽好きというわけでもない人たちにとって、「歌」と「音楽」は別のものであるらしいです。
歌のない音楽は「伴奏」であるか「何かの奇妙な音響」に聴こえるらしく、その辺のことを自分の記憶を頼りに書き連ねてみようと思います。
これは中学生のときの音楽鑑賞の時間に聴かされたのですが、旋律が中近東風であるせいか、同級生にとってはものすごく変な音楽に聴こえたらしく、大爆笑になってしまい音楽教師が怒っていたことがあります。
Case2 クイーン「ムスターファ」
これは私の妻の話です。学生時代に同級生が家に遊びにきて、その友人がアリス(70年代のフォークグループ)の信者でやたらアリスのアルバムを勧めてくるものだから、仕返しにこれを聴かせたら、その彼女はびっくり仰天して逃げ出したのだそうです。
一応歌があるとはいえ、♪い~~ぶらひぃいいーむ というアラブ調の強烈な歌いだしで、これも当時話題にはなったものの、クイーンはもともとワールドミュージック的な志向がありましたから、ファンはさして意外ではなかったのですが、やはりフォークソングしか聴かない人にとっては狂気の沙汰に聴こえたのでしょう。
Case3 ヒルデガルド・フォン・ビンゲン
これは中世音楽ですが、たまたま上司を私のクルマに乗せていたときにカーステレオで偶然流れていました。その上司は一言「おい!なんだこのオウム真理教みたいな音楽*1は!!気持ち悪い」との仰せで、確かに宗教音楽であることは間違いないですが、オウムもキリスト教もひっくるめて異教的なものを感じたことは間違いなさそうです。
Hildegard von Bingen - Music and Visions
感動的な歌詞がなければダメですか?
上に掲げた3曲のうち、2曲目はアラブ風デタラメ言語で3曲目はラテン語です。いずれにしても、意味がわからないという点では同じですが、日本人はどういうわけか「意味がある」「深い(?)」「泣ける」などの要素がない限りそれを音楽とは認めない傾向があるのだそうです。
折しも映画「ボヘミアン・ラプソディー」関連でNHKFMがクイーン特集を放送したとき、元ミュージックライフ編集長の東郷かおる子さんが云うには、「クイーンにインタビューした際、フレディーは"日本のファンは僕たちの曲の歌詞を熱心に聴いてくれる"と答えた」とのことです。
さて、ここで私のことですが私は歌詞を聴いて感動したことがほとんどありません
学生時代から大好きだったフランスのとある曲(いわゆるフレンチポップ)の歌詞は、男女の別れの描写であることは間違いないのですが、ほとんどがフランス語の言葉の押韻でできていて、早い話が一種の言葉遊びに近いもので、そもそも翻訳が不可能なものでした。
少なくとも歌詞で感動できる曲ではないのですが、それでもこの曲は私の心を捉えて離さないのです。
音楽の持つ物語性や意味性は、もっと別のところから来るのではないだろうかと思うのです。場合によってはハプニング的にできた音響が極めて印象的に聴こえることもあるわけです。
最後に私がものすごく変な曲だと思っているものの、大ヒットして名曲になっているものを紹介して終わります。
【高画質】 久保田早紀 - 異邦人 (シルクロードのテーマ) 【夜のヒットスタジオ 生演奏】