国民年金第3号被保険者廃止論議と婚活の長期化について
1986年に男女雇用機会均等法が施行*1されるのと同時に始まったこの制度。早い話が専業もしくは低収入の主婦(主夫)は配偶者の扶養に入れば年金納付義務が免除されるというもので、国民年金第3号被保険者と云います。
「なるほど妻は2号ではない」などと下品な冗談が囁かれていたようです。
この制度、「平等の原則に照らしておかしいのではないか」という意見も、一部のフェミニストによる「優秀な女性を"資本主義陣営"に取り込む分断工作だ」という意見も出ていましたが、いよいよ廃止の動きが本格化しだしたようです。
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男女雇用機会均等法と国民年金第3号被保険者制度導入時の騒動
すでに30年以上前のことなので、今ではこの法律施行によって女性の社会参加が一気に高まったという誤った伝説が流布されているようですから、一応ここで当時の雰囲気を書き連ねてみます。
(1)先に女性の"社会退出"が行われた
すでに結婚して働いている女性は、収入を一定程度に下げないと国民年金第3号被保険者制度(以下「3号」と略記)の恩恵が受けられないので、フルタイム勤務からパート勤務に変更したり、さっくり仕事をやめて専業主婦になったりする人たちが出ていました。地ならしが終わって女性が社会進出してきたのは、おそらく90年代に入ってからでしょう。
(2)バブル景気の影響
世の中はバブル景気だったので、就職先はいくらでもあったものの総合職はまだ少なく、総合職女性のロールモデルもいなかったので、バブル崩壊とともに退社してしまった総合職女性が数多いたようです。
(3)労働者派遣法の適用範囲拡大
現在、非正規雇用を増やして雇用の不安定化を招いた悪の元凶扱いになっている労働者派遣法の適用範囲拡大は、もともと従業員採用に関して「男だけ 女だけ」という区分が禁止されたため、女性でなければ何かとうまくいかない業種(接客や単純な事務補助など)で女性を確保するための便法として使われたものです。*2
就職氷河期における極端な女性差別
私はその頃はすでに就職していて就活生の現状を直接見聞きしていたわけではないのですが、相当優秀な女子学生であるにもかかわらず保険の外交員(離職率が極めて高い)になったり、フリーターをしながら捲土重来を期していたらそのままフリーターを続けることになったり、まず氷河期世代の悲惨だった就活の話は相当に耳にします。
もっとも、男子学生でもいくらか状況はマシだったというだけで、今は40代になったこの世代を日本がどう扱っていくかはそのうち社会問題になっていくでしょう。
そして人手不足の現在
政府主導の男女共同参画とか女性活躍推進というのは、一種の美辞麗句であって、「特に女性の皆さんは安い賃金でたくさん働いてください。」というのがホンネでしょう。*3
男女共同参画が云われはじめてから、婚活産業が盛んになり始めたのはその反映だと思います。(男女問わず働きたくない人は一定数いるのです。)
古くから女性登用が進んでいる資生堂化粧品の状況に関して、この本によると、何かのアンケートの結果として、2割の女性がキャリア最重視、2割の女性が私生活重視なのですが、残り6割の女性はどちらに転んでもいいというニュートラルな状況であったことが書かれています。
そうなると、働き方改革も進まず、仕事には生きがいを見つけられない女性たちが、何かの弾みで一斉に私生活重視に行くと婚活がより長期化するのではないかと私は思っています。
つまり、年収600万円希望というのが700万円希望に格上げされて、ますます熾烈な闘いとなり、婚活産業が殷賑を極め、婚活疲れで心療内科の患者が増え、平成に生起した現象がますます増大するのではないかと思います。
3号廃止をするにしても、平等の原則に照らして問題だと云うのなら、当初制度設計時の議論を再度見直してみる必要があるでしょうし、財源がないからだというのなら他の財政措置を検討したのち結論を出せばよいと思います。