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<現代音楽入門書>こんな書籍にお世話になりました

「現代音楽」という、そもそも定義が困難でありながら一ジャンルを形成している音楽を聴いてすぐに感動できたという方は稀だと思います。しかし、もし少しでも興味が湧いたというのであれば、すでに感動の入り口に立っている状態でしょう。

ただ、闇雲に聴けば良いというわけではないので、「入り口に立っている人々」向けのいろいろな入門書が存在するわけです。

自分もそういう経験を経て、現代音楽に親しめるようになりましたので、その過程でお世話になった書籍を紹介してみたいと思います。

 

1 「現代音楽を読む」(ホアキン・M.ベニデズ)

現代音楽を読む―エクリチュールを越えて

現代音楽を読む―エクリチュールを越えて

 

 少年時代に出会ったバイブルのような本です。とはいっても、現代音楽を網羅的に紹介しているわけではなく、50年台~60年台における「管理された偶然性(アレアトリー)」「偶然性と不確定性の違いとその実践例」「現代音楽における即興の意義」についてかなり多くの作品例を紹介しています。


副題が「エクリチュールを超えて」とあるように、現代音楽における記譜はどうあるべきかということが主題になっています。

この本で紹介されていた作品
・ツィクルス(シュトックハウゼン
・ルフラン(シュトックハウゼン
・シュピラール(シュトックハウゼン
ピアノ曲Ⅺ(シュトックハウゼン
・7つの日より(シュトックハウゼン
・イマジナリーランドスケープ第4番(ケージ)
・HPSCHD(ケージ)
ほか

 

2 NHK電子音楽スタジオ記念番組(FM放送)

これは本ではなくFMラジオ放送です。NHK電子音楽スタジオの撤収に伴う一種の追悼番組ですが、数回に渡って戦後の音楽と電子音楽勃興の歴史を紹介していただきました。

電子音楽は生楽器では不可能な音色のセリーを実現できるという期待をもって実践されたため、ミュージックコンクレートと電子音楽はまったく来歴が異なることなど大変勉強になりました。

3 電子音楽・インジャパン(田中雄二

電子音楽in JAPAN

電子音楽in JAPAN

 

 
電子音楽というものを、「なんらかの電子的装置を用いて実現する音楽」と大雑把に定義すると、黛敏郎らの初期電子音楽冨田勲シンセサイザーYMOのテクノなどが同時に挙げられることになり、そうした現代音楽~ポピュラーの分野までカバーしてくれる良書だと思います。分厚い本なので読了が大変ではあります。派生書籍もいくつかあります。

 

4 はじめての<脱>音楽 やさしい現代音楽の作曲法

はじめての<脱>音楽 やさしい現代音楽の作曲法

はじめての<脱>音楽 やさしい現代音楽の作曲法

 

「作曲法」と銘打っていますが、これは親しみを持ってもらうための修辞だろうと思います。2018年刊行なので50年台のセリエリズムから60年台のフルクサス運動、ミニマル、スペクトル音楽まで網羅されていますから、入門には良い本だと思います。

ただ、音楽家が書いているせいなのか譜例が多くなりがちで、譜面を見ても音がイメージできない一般ピープルは少々困るわけですが、可能ならば誰かがこの内容をYou Tubeに実際の音や解説とともにアップしてくだされば、市民大学のような場でも使えるのではないかと思います。

5 NHK現代の音楽西村朗

これもFM番組。
時間枠が50分しかないとはいえ、昭和の昔から続く長寿番組です。昭和の時代には「我は前衛也」といったいかめしさがありましたが、昨今はそういうこともなく西村先生の平易な解説もわかりやすいですし、過去の巨匠作曲家から日本の若手作曲家まで広範に紹介してくれるので、私は毎週欠かさず録音して聴いています。

 

6 時間の園丁ほか(武満徹

これは音楽解説本ではなくエッセイ集です。武満徹の音楽の独特の響きを指して「タケミツトーン」と呼ばれることがありますが、この方は文章までタケミツトーンになっているという意味で、音楽の一節を聴くように読んでいました。

 

7 (おわりに)レコードコレクターにならなかった自分の幸運

一般に中学高校生時代はとかく小遣いが限られていますので、レコードを買うのは年に数回で、自分が持っていないレコードはクラスメートから借りてカセットに録音して聴くという、おそらく多くのご同輩が歩んできた道を私も歩んできました。

ただ、彼らはいろいろな音楽が聴きたいのではなく、「レコードが欲しい/集めたい」ので、レコードにまつわる思い出とか、ジャケットのデザインや触ったときの感触とか、付録ポスターとか、針を落とすときの感動とかいうものが重要だったわけですが、私は音楽それ自体しか興味がありませんでした。

だから、ある程度聴いたものは一応カセットに録音しておいて、すぐに中古レコード店に売り払い、得た金で別のレコードを買うということを繰り返してきました。

手元に残った音盤はほとんどありませんが、その分さまざまな音楽を吸収できたと思います。

現在、音楽は配信に移行しつつありますが、音盤には必ずついているライナーノーツなるものがなくなったので、あまり信用ができないWikipediaを参照するしかなくなりました。

その分、音楽書のニーズが高まったとも言えるので、今後とも現代音楽の良書が出てくれることを願います。