述而不作 いにしえの未来

占い師の見てきた世の中を語ります 遥か古代から続く終わりの始まりを見据えて

【20世紀音楽】(ブーレーズ追悼)私的名曲10選(ただし演奏時間35分以内)

ピエール・ブーレーズ(作曲家/指揮者)が先般逝去されたことで、「音楽の20世紀」が2015年で終わったことを実感しています。

 

選曲に一定の枠組みがあるとはいえ、広範に指揮活動もしていたわけですから、音楽の20世紀に関する裾野を広げたご功績は多大だと思いますので、追悼を兼ねて「20世紀音楽名曲選」私的版を書いてみます。

 

この種のセレクションは、音楽史的に重要な曲も広く人気のある曲も自分の好みも一緒くたになってしまって収拾がつかなくなるのが相場と決まっていますので、一定の制約条件の下でのセレクションとさせていただきます。

 

(1)演奏時間が35分以内であること(少々の誤差は認めます)

(2)可能な限り別版や編曲版が存在すること(本人の編曲でも他の作曲でも構わず)

(3)可能な限り上演機会(録音の種類)が多いこと

(4)可能な限りクラシック音楽ファンまたは現代音楽ファン以外にも広く知られていれること

 

演奏時間35分というのは、言わずもがなではありますが、20世紀音楽を語る上で絶対に欠かせないストラヴィンスキー春の祭典」とムソルグスキー/ラヴェル編「展覧会の絵」がおおむねこの演奏時間になっていることによります。(これとは話が別ですが、初期ビートルズライブコンサートの時間もこの時間だったそうですし、LPの収録時間が約40分だったのですから、人が集中して音楽に取り組めるのはおおむねこれくらいの時間なのだろうと思います。)

 

この条件でセレクトすると、極めて有名な曲ばかりが揃いますので、大変都合が良いと思います。

 

「まだ発掘されていない名作がある」とか「これから形になるのを待っている未来の名作がある」というのは確かにそのとおりですが、それは別の機会があれば聴いてみますので、もしあるのでしたらお知らせください。(ただし演奏時間35分以内です。)

 

1 ストラヴィンスキー春の祭典

 

www.youtube.com

 

20世紀音楽の金字塔であり、20世紀音楽の潮流のひとつとなった土俗主義を代表する曲です。かつては演奏至難な曲としても知られていましたし、いわゆるオーディオテスト用としても使われていたので、演奏史としてはかなり異様だったものもあります。

 

意外なほど古くから日本でも広く一般に知られていて、1950年代のニュース映像では緊迫した場面のBGMとして使われていました。(第二部「選ばれたいけにえへの賛美」の一部)

 

#何度も繰り返して聴くと覚えてしまい、ヘッドバンキングができることでも知られていますw

 

(編曲)ラリー・コリエルのギターソロ ピアノ連弾ほか

 

2 ムソルグスキー/ラヴェル編曲「展覧会の絵

 

「プロムナード」のメロディは知らない人がいないくらいの有名曲ですが、第2曲「こびと」のグロテスクな響きや、別のプロムナードを挟んでの「古い城」のアルト・サックスほか聴きどころ多数です。

 

編曲が多すぎて、ラヴェル版がどれだったのかを忘れるほどの多彩な曲です。

 

www.youtube.com

 

3 R.シュトラウス「4つの最後の歌」

 

作風は後期ロマン派ですが、戦後まもなくの作品です。崩壊した第三帝国と灰燼に帰した国土の中で作曲された彼岸への憧憬の音楽。感動的です。

 

www.youtube.com

 

4 ブーレーズ「主のない槌」

トータルセリエズムで作曲された作品なのですが、何度か聴きこむとドビュッシーラヴェルの音楽の延長で聴けてしまう美しい作品です。

 

www.youtube.com

 

5 シュトックハウゼン「コンタクテ」

 

電子音楽の響きの多彩さに加えて、未知の音と既知の音が「接触」するというコンセプトは、その後のライブエレクトロニクスへの道を拓きました。

 

www.youtube.com

 

6 ショスタコーヴィッチ「弦楽四重奏曲第8番」

 

15曲からなら弦楽四重奏曲の中でも演奏頻度が高く、極めて劇的な表現と沈痛な響きが交差する親しみやすい入門曲と言えます。

 

www.youtube.com

 

(編曲)バルシャイによる「室内交響曲」への編曲

 

7 ピアソラ「タンゴの歴史」または武満徹「海へ」

 

どちらもフルートとギターのための作品で、どちらか単独だと寂しいのですが、この2曲を演奏するためのユニットが出来ていて、それらのユニットのための新作も書かれていますので殿堂入りとなりそうです。

 

www.youtube.com

 

(編曲)「海へ」は、作曲者による「海へII」「海へIII」があり、「タンゴの歴史」はサクソフォンその他さまざまな楽器へのアダプテーションがあります。

 

8 ケージ「4:33」

 

演奏者が何も音を出さないということで話題になった作品で、実は聴くべきものはほとんどないのですが、「バージョンの多様性」「有名」という点で文句なく合格なので、エントリーしてみます。

 

www.youtube.com

 

(編曲)演奏(表現)のバリエーションが極めて多いです。

 

9 シュトックハウゼン「ヘリコプター弦楽四重奏曲

 

弦楽四重奏団が4台のヘリコプターに分乗して演奏し、その様子がテレビカメラで演奏会場に中継されるという、常人には到底想像すらできない音楽として度肝を抜いた作品です。

 

私個人の意見として、とにかくアコースティックな響きにこだわり、マイクロフォンを通した音を嫌うクラシック音楽に穴を穿つ作品ではないかと思います。おおがかりな上演そのものがエキサイティングです。

 

www.youtube.com

 

10 ELP「タルカス」(吉松隆ほか編曲)

 

オリジナルは、Emerson,Lake & Palmerのプログレッシブ・ロックミュージックです。

ロックミュージックをクラシック音楽のオーケストラ曲として編曲するとどうしても響きが単調で、打楽器ばかりガンガン響くうるさい音楽になりがちなのですが、それでも吉松隆が投じた一石は大きく、数多くの編曲版が登場しています。

 

www.youtube.com

 

以上、10曲のセレクションとなっていますが、もちろん他にも名曲はたくさんありますし、バルトークドビュッシーが外れてしまいましたが、戦後前衛まで入れる以上、代表的作曲家の代表作を全部入れるととてつもないリストになりますので、こういう形になりました。あしからず。

 

(数ある他の「傑作」につきましては、ぜひ上演機会の増加を図っていただきたく存じます。)